英文添削サービス事業は悪いことばかりではなかった。その代表例は特許というキャリアとの出会いである。
1999年当時、ビジネス書では「ビジネスモデル特許」という言葉がトレンドであった。「事業プランが特許で20年間保護される。価格競争をしなくてもアイデアだけで大企業相手に戦える」といった内容だ。
これは凄い。人づてで大阪市内のO特許事務所に相談に行く。これが私の人生の転機となった。
対応していただいたのは、O特許事務所所長のO弁理士。私のつたない英文添削事業の説明を丁寧に聞いてくれてアドバイスをくれる。単なるアドバイスではなく事業の収益性や将来展開などについてもコメントしていただく。O弁理士のコミュニケーション能力の高さが新鮮だった。
そして何より「どうせ技術を理解できない法律家」くらいにしか思っていなかった私の知識を遥かに凌駕する技術知識を持っていらっしゃったのには驚いた。
かっこいい
これが私の素直な感想だ。大学研究室の研究室推薦枠で就職希望先を選ぶ機会があった。特許分野で日本一有名な企業を選らぼうとして選んだ企業が今勤めている某社である。
英文添削サービスを失敗させた私には事業に対するセンスはないかもしれない。ただ、その時にこのキャリアを選んだセンスだけは正しかったと今でも思う。特許の仕事に必要な素養は多岐に渡る。
- 最新の技術知識とそれを継続的にキャッチアップする意識
- 広くて深い技術に対する好奇心
- 自社・他社の事業展開の予測能力
- レベルの高いコミュニケーションスキル
- 世界各国の国策や司法・行政制度の継続的な把握
- 行間も読まなければならない語学センス
- 根性
それから3年後、私は弁理士試験の最終面接にのぞんでいた。意匠法の面接試験が若干早く終わり、面接官の方から「企業で働いているのか、特許事務所で働いているのか」「どういう仕事をしているのか」といった一般的な質問を受けた。最後に「特許の仕事はどう思うか?」と聞かれた。
私の天職です。
こう答えた私の気持ちは今も変わっていない。
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